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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2019年9月 / 2019年11月 発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節剤 | ||
3. 一般的名称 | ||
ボルチオキセチン臭化水素酸塩 | ||
4. 適応症 | ||
うつ病・うつ状態 | ||
5. 類薬との比較 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤は、複数の神経伝達物質を調節することで、うつ病に起因する多様な症状を改善することが期待されています。 【承認状況】 海外では、米国、欧州、カナダを含む計80ヵ国以上で承認されています(2020年1月現在)。 【作用機序】 複数の5-HT(セロトニン)受容体への作用と、SERT(セロトニントランスポーター)阻害作用を介して、セロトニン系、ノルアドレナリン系、およびドパミン系等の複数の神経伝達系に関与することにより、セロトニンだけでなくノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミンの遊離を調節します。 【用法・用量】 通常、成人にはボルチオキセチンとして10mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態により1日20mgを超えない範囲で適宜増減できますが、増量は1週間以上の間隔を空けて行います。 なお、CYP2D6の阻害作用を有する薬剤を投与中の患者または遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者では、本剤の血中濃度が上昇するため10mgが上限となります。 【副作用】 大うつ病性障害患者を対象とした国内臨床試験および国際共同試験において、1,050例(うち日本人708例)中、499例(47.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、悪心200例(19.0%)、傾眠63例(6.0%)、頭痛60例(5.7%)でした(承認時)。 なお、重大な副作用として、セロトニン症候群、痙攣、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(いずれも頻度不明)が報告されています。
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7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1.モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬のセレギリン塩酸塩(商品名:エフピーほか)と、ラサギリンメシル酸塩(同:アジレクト)を服用中または中止後14日以内の患者では禁忌です。また、本剤を服用していて、これらの薬剤を投与する必要が生じた場合には、本剤の服用を中止した後14日以上の間隔を空ける必要があります。 2.本剤の作用により血小板凝集能が阻害される恐れがあるため、出血性素因のある患者や出血傾向を増強させる薬剤を服用中の患者は併用注意です。 3.本剤を18歳未満の大うつ病性障害患者に投与する際には、適応を慎重に検討する必要があります。 【患者さんへの指導例】 1.この薬は、脳内の気分に関わる神経伝達をスムーズにして、抑うつ気分や不安などの症状を和らげます。 2.自己判断で服薬を中止したり、量を減らしたりすると、症状が悪化することがあるので、医師の指示どおりに飲み続けることが大切です。 3.飲み始めや増量時に、吐き気、眠気、頭痛などを感じることがあります。多くの場合、飲み続けると軽減しますが、症状がつらいときには、すぐに医師または薬剤師に連絡してください。 4.興奮・混乱、不眠、体の震え、発熱・発汗、嘔吐物や便に血が混じる、めまい、突然の意識低下や片側の手足が動かしにくくなるなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。 5.飲み合わせに注意が必要な薬があるため、他の薬を使用している場合や新たに使用する場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。 【ここがポイント!】 わが国で承認されている既存の抗うつ薬には、三環系・四環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)およびノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)があります。本剤は、複数のセロトニン受容体へのアゴニスト作用とトランスポーター阻害作用を有し、セロトニンだけでなく、ノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミンの遊離も調節します。このことから、「セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬」に分類され、複数のアプローチでうつ病・うつ症状を改善することが期待されています。 抗うつ薬の服用中に、急に気分が落ち着かなくなり、振戦・発熱・発汗などが認められた場合は、セロトニン症候群の可能性があります。不安や焦燥が強い場合はうつ病の悪化と判断が難しいこともありますが、振戦や発汗などの身体症状を伴う場合はセロトニン症候群を疑い、速やかに受診勧奨を行いましょう。そのほか、飲み始めや増量時に発現しやすい副作用の症状については、具体的に伝えるようにしてください。 なお、24歳以下の患者では自殺念慮・企図のリスクが増加するため、2007年よりすべての抗うつ薬の添付文書においてリスクとベネフィットを考慮して投与するよう注意喚起が記載されています。自傷や気分変動など情緒不安定の発現や増悪が認められる恐れがありますので、患者さんの様子に異変を感じた場合は医師に連絡し、必要に応じて減量もしくは中止について相談しましょう。また、国内での副作用情報には注目しておくとよいでしょう。 | ||
8. 製造販売元など | ||
製造販売元:武田薬品工業株式会社 提携:ルンドベック・ジャパン株式会社 お問合せ先:武田薬品工業株式会社 くすり相談室 0120-566-587 更新:2023.06.11 イラスト説明追加 |