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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2019年9月 / 2019年11月 発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
HCNチャネル遮断薬 | ||
3. 一般的名称 | ||
イバブラジン塩酸塩 | ||
4. 適応症 | ||
洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が 75 回 / 分以上の慢性心不全 ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。 | ||
5. 類薬との比較 | ||
類薬はありません。 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤は、心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響を与えず、心拍数を減少させる新規慢性心不全治療薬として期待されています。 【承認状況】 本剤は「慢性心不全」に関連する効能・効果について、100以上の国または地域で承認されています。(2019年9月現在) 【作用機序】 心臓の洞結節におけるHCN(hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated)チャネルを阻害し、心臓のペースメーカー電流であるIf(過分極活性化陽イオン電流)を抑制することによって、活動電位の拡張期脱分極相における立ち上がり時間を遅延させ、心拍数を減少させます。 【用法・用量】 通常、成人にはイバブラジンとして1回2.5mgを1日2回食後経口投与します。1回投与量は2.5mg、5mg、7.5mgのいずれかとし、増量する際は2週間以上の間隔を空けて段階的に調節します。目標とする安静時心拍数は50~60回/分とし、目標値を超える場合は段階的な増量、下回るまたは徐脈関連症状(めまい、倦怠感、低血圧など)が認められた場合は段階的な減量が必要です。 なお、本剤は次のいずれかの患者に対して投与を検討します。 ・β遮断薬の最大忍容量を投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者 ・β遮断薬に対する忍容性がない、もしくは禁忌など、β遮断薬を使用できない患者 【副作用】 国内第III相試験(ONO-1162-03試験)および海外第III相試験(SHIFT試験)において、本剤が投与された安全性評価対象3,359例のうち、636例(18.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、徐脈122例(3.6%)、光視症95例(2.8%)、胃腸障害47例(1.4%)、心不全27例(0.8%)、霧視15例(0.4%)でした。 なお、心拍数減少を含む徐脈(8.0%)、光視症(同上)、霧視(同上)、房室ブロック(0.6%)、心房細動(0.3%)、心電図QT延長(0.2%)が、重大な副作用として報告されています(承認時)。 | ||
7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1.高度の低血圧患者(収縮期血圧が 90mmHg 未満又は拡張期血圧が 50mmHg 未満)には、血圧が低下するおそれがあるため、禁忌です。 2.洞不全症候群、洞房ブロック又は第三度房室ブロックのある患者(ペースメーカー使用患者を除く)には、症状が悪化するおそれがあるため、禁忌です。 3.重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)の患者には、禁忌です。 4.本剤はCYP3Aの基質であるため、強力なCYP3A阻害作用を持つイトラコナゾール、クラリスロマイシンなどのほかにも、中等度のCYP3A阻害作用に加えて心拍数減少作用を持つベラパミル、ジルチアゼムとは併用禁忌です。 【患者さんへの指導例】 1.この薬は、心臓の過剰な働きを緩やかにすることで、心臓の負担を軽減して心不全の悪化を防ぎます。 2.暗い部屋で突然稲妻のような光が見えたり、目がチカチカしたり、視界がかすんで見えたりするような症状が生じることがあります。これらの症状が認められた場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないでください。(眼に関する症状は、 飲みはじめてから約 3 ヵ月以内に現れること多いです。) 3.めまい、立ちくらみ、息切れ、脈が飛ぶ、動悸などの症状が現れたら、すぐに医師に連絡してください。 4.このお薬は、妊娠・授乳している女性には使うことができません。妊娠を希望する場合は主治医に相談してください。 (★2024.02の添付文書の改訂により、生殖能を有する者に記載されている避妊に関する注意事項の避妊期間が「投与中及び投与終了後一定期間」から「投与中及び最終投与後3日間」に変更されました。) 【ここがポイント!】 慢性心不全の患者さんでは、十分な血液量を拍出できない心臓の働きを補うために、心拍数が高くなることがあります。それが長期間継続すると、日常生活に支障が生じるのみならず、予後にまで悪影響を及ぼすことが知られています。 本剤は、心臓の洞結節に発現するHCNチャネルを阻害することで、心臓のペースメーカー電流を抑制して心拍数を減少させます。対象となる患者さんは、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けていて、安静時心拍数が75回/分を上回る方に限定されますが、副作用や禁忌によってβ遮断薬が使用できない場合も可能です。 本剤の効果が期待できるのは、心臓が正常なリズムを示す洞調律を保った患者さんです。副作用の眼症状発現について、本剤は洞結節のHCN4チャネルに加えて、視細胞のHCN1チャネルを阻害することが原因の1つと考えられています。光視症、霧視を認めた場合は、本剤の減量や投与中止を含めた対応を提案しましょう。 【ガイドラインでの位置づけ】 JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版にはFANTASTIC4に続いて洞調律かつ心拍数75回/分以上の場合に本剤の投与が推奨されています。こちらに解説いたしました。 | ||
8. 製造販売元など | ||
製造販売元:小野薬品工業株式会社 提携:レ ラボラトール セルヴィエ お問合せ先:小野薬品工業株式会社 くすり相談室 0120-626-910 【更新情報】 2023-09-08 コララン錠の製剤写真を掲載 2024-03-17 添付文書改訂 避妊期間について加筆 |