◆ 新薬情報 index

2015年9月製造販売承認

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■ピートルチュアブル錠250mg,500m…■イフェクサーSRカプセル37.5mg,7…■ヴィキラックス配合錠■エクメット配合錠LD,HD■ザガーロカプセル0.1mg,0.5mg■マリゼブ錠12.5mg,25mg■ミティキュアダニ舌下錠3300JAU,1…■スピオルト レスピマット28吸入(,60…■ゼビアックスローション2% / 油性クリ…■ロコアテープ
■ ピートルチュアブル錠250mg,500mg
1. 承認概要
新有効成分 2015年9月 / 2015年11月 発売
2. 薬効分類名
高リン血症治療剤
3. 一般的名称
スクロオキシ水酸化鉄チュアブル錠
4. 適応症
透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
5. 類薬との比較

リン結合ポリマーとしては、セベラマー塩酸塩(レナジェル、フォスブロック)とビキサロマー(キックリン)があります。金属塩としては、炭酸Ca製剤(カルタン)、炭酸ランタン(ホスレノール)、クエン酸第二鉄水和物(リオナ)の5種類があります。本剤は、リオナと同様の3価鉄製剤です。
6. 特徴
【特徴】
本剤は、リオナと同様に3価鉄製剤です。カルタンのようなカルシウム製剤ではないため、高カルシウム血症の心配がなく、非ポリマー性ではないため便秘や腸閉塞等の重篤な胃腸障害の発現リスクが低いといわれています。また、水なしで服用できるチュアブル錠ですので、水分制限が必要な透析患者さんに有用な製剤です。CKD保存期の高リン血症の適応はありません。

【承認状況】
本剤は海外の37か国ですでに承認されています(2016年6月現在)。

【慢性腎臓病と高リン血症】
腎機能が低下すると、リンの排泄ができなくなり、徐々に体内に溜まって高リン血症となります。そうするとリンがカルシウムと結合して、血管壁などに付着して血管石灰化(異所性石灰化)を招き、心筋梗塞や脳梗塞などの生命にかかわる危険性が高まります。また、血中リン濃度が高くなると、副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されます(二次性副甲状腺機能亢進症)。高PTHとなると骨からCaが溶出し、骨の中のカルシウムが減少し、骨密度の低下などを引き起こします。
現在、透析患者における高リン血症の治療としては、食事指導によるリン摂取制限、透析によるリンの除去に加え、消化管からのリン吸収を抑制する経口リン吸着薬の投与が行われています。

【既存薬について】
沈降炭酸カルシウムは、カルシウム負荷による高カルシウム血症に注意が必要で、我が国では投与量は 3g/日を上限とすることが妥当とされていて、単剤では血清リン濃度を管理するための十分量を投与できない場合があります。
セベラマーはカルシウム非含有リン吸着薬ですが、便秘、腹部膨満等の消化器系の副作用が高頻度に認められ、便秘のある患者では腸閉塞や腸管穿孔のおそれもあります。また、セベラマーの投与量は、服薬錠数 12~36 錠/日で、患者さんにとって服薬錠数の負荷が大きいです。ビキサロマーはセベラマーと比較して便秘、腹部膨満等の消化器系の副作用が軽減されていますが、投与量は服薬カプセル数 6~30 カプセル/日でやはり服薬錠数の負荷が大きいです。服薬錠数負荷の増大は服薬アドヒアランスの低下にもつながります。
炭酸ランタン水和物は便秘の副作用は少ないものの、嘔吐及び悪心の発現が他のリン吸着薬と比較して多く、また長期投与によるランタンの骨及び他の臓器への蓄積とその影響は明らかになっていません。
(PMDA ピートルチュアブル審査報告書より)

【作用機序】
スクロオキシ水酸化鉄は、水酸化鉄(III)/スクロース/デンプンからなるリン吸着薬です。多核性の水酸化鉄は消化吸収されないので、経口P吸着剤として有望な物質でしたが、吸着能が低下していく課題がありました。その課題を改善したのがスクロオキシ水酸化鉄で長期間保管後も高いリン吸着能を示します。
本剤を服用すると、まず消化管内でスクロースとデンプンが消化されます。その後食事由来のリン酸が不溶性の多核鉄と結合します。これにより消化管からのリン吸収を抑制し、血清リン濃度を低下させます。本剤のような3価鉄は、2価鉄よりも消化管から吸収されにくいことからリン吸着に適しているといわれています。

【用法・用量】
通常、成人には、鉄として1回250mgを開始用量とし、1日3回食直前に経口投与します。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減しますが、最高用量は1日3000mgとします。

【副作用】
国内で実施した血液透析及び腹膜透析患者を対象とした国内臨床試験において、494例中159例(32.2%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢(22.7%)、便秘(2.0%)です(承認時)。
鉄製剤は特に下痢に注意が必要で、用量依存的に下痢の副作用頻度が高まります。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
(1)増量を行う場合は、増量幅を鉄として1日あたりの用量で750mgまでとし1週間以上の間隔をあけて行います。
(2)テトラサイクリン系抗生物質及び甲状腺ホルモン製剤は、本剤と結合し、吸収が減少するおそれがあるため併用注意です。また、セフジニル、抗パーキンソン剤、およびエルトロンボパグオラミン(レボレード錠)は、鉄剤との結合により吸収が減少するおそれがあるとの報告があるため、注意が必要です。
 (セフジニルの添付文書では、「鉄剤について、セフジニルの吸収を約10分の1まで阻害するので、併用は避けることが望ましい。やむを得ず併用する場合には、本剤の投与後3時間以上間隔をあけて投与する。(腸管内において鉄イオンとほとんど吸収されない錯体を形成する。)」と記載されています)
(3)定期的に血清フェリチン、ヘモグロビンなどを測定します ( 本剤は消化管内で作用してほとんど吸収されませんが、本剤の成分である鉄が一部吸収されるため) 。
(4)チュアブルなので吸湿しやすいため、一包化、粉砕はできません(用時粉砕はOK)。

【患者さんへの指導例】
(1)食事に含まれたリンを消化管内で吸着し、リンが体内に吸収されないようにすることで血液中のリン濃度を低下させるお薬です。
(2)このお薬は1日3回食事の直前に飲みます。食物からのリンの吸収を抑えるお薬ですので、食事と間隔を開けずに服用してください。
(3)口の中で噛み砕いて服用してください。比較的割れやすい錠剤なので、シート内で錠剤が割れていたり、縁がわずかに欠けている場合でも1回分をすべて服用してください。
(4)お薬の成分により、便が黒くなることがあります。また、口の中が一時的に着色(茶褐色)することがあります。
8. 製造販売元など
製造販売元:キッセイ薬品工業株式会社
お問合せ先:キッセイ薬品工業株式会社 くすり相談センター 0120-007-622
(文責 下平秀夫) 2016年5月/2016年6月更新