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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2019年3月 / 2019年7月 発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤 | ||
3. 一般的名称 | ||
ペフィシチニブ臭化水素酸塩 | ||
4. 適応症 | ||
既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む) | ||
5. 類薬との比較 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤は、ゼルヤンツ、オルミエントに続く、3剤目のJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬で、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。 【関節リウマチの薬物療法の進展 】 関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。 【承認状況】 海外では、承認されている国または地域はありません。 【作用機序】 本剤は、ヤヌスキナーゼ(JAK)の4種類、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の働きを抑えることで、炎症作用の活性化、免疫細胞の増殖を抑制します。それによって、炎症性サイトカインによる細胞内シグナル伝達を阻害することで、関節リウマチにおいて関節の炎症や破壊を引き起こす細胞の活性化や増殖を抑制する作用を有します。 【用法・用量】 通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。 なお、本剤は過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。 【副作用】 後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。 なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。 | ||
7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1.敗血症等の重篤な感染症の患者や活動性結核の患者には、症状を悪化させるおそれがあるため、禁忌です。 2.重度の肝機能障害を有する患者は、副作用が強くあらわれるおそれがあるため禁忌であり、中等度の肝機能障害患者では投与量の制限があります。 【患者さんへの指導例】 1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。 2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。 3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。 4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。 5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。 6.本剤を服用中の授乳は避けてください。 【ここがポイント!】 本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。 生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。 留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。 承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。 | ||
8. 製造販売元など | ||
製造販売元:アステラス製薬株式会社 お問合せ先:アステラス製薬株式会社 メディカルインフォメーションセンター 0120-189-371 |