◆ 新薬情報 index

2019年6月製造販売承認

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■ ゾルトファイ配合注フレックスタッチ
1. 承認概要
新医療用配合剤 2019年6月 / 2019年9月 発売
2. 薬効分類名
持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ 配合注射液
3. 一般的名称
インスリン デグルデク(遺伝子組換え)/リラグルチド(遺伝子組換え)
4. 適応症
インスリン療法が適応となる2型糖尿病
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は、持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬を1回で投与できる国内初の配合注射製剤で、より簡便で確実な血糖コントロールが期待されています。

【承認状況】
海外では、2019年3月時点において、欧米を含む58ヵ国で承認されています。

【作用機序】
本剤は、血糖コントロールを改善する作用機序を有する持効型インスリン(インスリン デグルデク)とGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)を配合した薬剤です。
インスリンデグルデクは持続的なインスリン作用を有し、1日1回の投与で持続的に緩やかな血糖降下作用を示します。リラグルチドはGLP-1のアミノ酸配列を改変させてDPP-4の分解を受けにくくしたGLP-1受容体作動薬です。GLP-1は、生体内では小腸下部のL細胞から分泌され、末梢では膵β細胞でのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞でのグルカゴン分泌を抑制し、中枢では摂食抑制ホルモンとして作用します。

【用法・用量】
通常、成人では、初期は1日1回10ドーズ(インスリン デグルデク/リラグルチドとして10単位/0.36mg)を皮下注射します。投与量は患者の状態に応じて適宜増減しますが、1日50ドーズを超える投与はできません。注射時刻は原則として毎日一定とします。なお、投与量は1ドーズ刻みで調節可能です。

【副作用】
国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象症例380例中126例(33.2%)に224件の臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、便秘28例(7.4%)、下痢18例(4.7%)、悪心16例(4.2%)、糖尿病網膜症11例(2.9%)、および腹部不快感9例(2.4%)でした(承認時)。
なお、重大な副作用として、低血糖、アナフィラキシーショック、膵炎、腸閉塞(いずれも頻度不明)が報告されています。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病患者には、インスリンのみを含有する製剤による速やかな治療が必須となるので禁忌です。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、不足している基礎インスリン分泌を補充するインスリンと、血糖値が高くなるとインスリンの分泌を促す薬の2種類が配合されており、血糖コントロールを改善します。
2.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など、危険を伴う作業には注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。
3.嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などが現れた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けてください。
4.未使用の薬剤は冷蔵庫内に保管してください。凍ってしまった場合は使えなくなるので注意してください。なお、旅行などに際して短期間ならば室温に置いても差し支えありません。
5.使用開始後は、30℃以下の室内で遮光して保管してください。25℃以下の環境であれば4週間以内、30℃に近くなる環境では3週間以内に使用してください。

【ここがポイント!】
本剤は、国内初の持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の配合皮下注射製剤です。インスリン デグルデク(商品名:トレシーバ)と、リラグルチド(同:ビクトーザ)が配合され、デバイスにはプレフィルドペン型注入器「フレックスタッチ」が採用されています。
インスリンを用いた治療では、経口血糖降下薬と持効型インスリン製剤を組み合わせた「BOT(Basal Supported Oral Therapy)」や、持効型インスリン製剤と(超)速効型インスリン製剤を組み合わせた「強化インスリン療法」がよく行われています。本剤のような、持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬を組み合わせた治療法は「BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 Therapy)」と呼ばれています。1日1回の投与で、インスリン投与による空腹時血糖改善とGLP-1による食後血糖改善の両方が期待できることから、BOTから強化インスリン療法にステップアップする前段階の治療として近年注目されています。
これまでBPTを行う場合は2種類の注射薬が必要でしたが、本剤によって1種類での治療が可能となったため、長期治療を必要とする糖尿病患者さんのアドヒアランスの向上と血糖コントロールの改善が期待できます。
臨床試験では、本剤は基礎インスリン製剤に比べて低血糖のリスクを上げることなく、空腹時および食後の血糖コントロールを改善していますが、外来で変更する場合はとくに低血糖発現時の対応方法や連絡方法をしっかりと確認しましょう。なお、リラグルチドとDPP-4阻害薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有しているため、併用処方の場合には疑義照会が必要です。
8. 製造販売元など
製造販売元:ノボノルディスクファーマ株式会社
お問合せ先:ノボノルディスクファーマ株式会社 ノボケア相談室 0120-180363
(文責 下平秀夫) 2019年12月