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2022年3月製造販売承認

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■ミチーガ皮下注用60mgシリンジ■カログラ錠120mg■ジスバルカプセル40mg■ケレンディア錠10mg,20mg
■ ミチーガ皮下注用60mgシリンジ
「ミチーガ皮下注用」は、4週間の間隔で皮下投与する、抗体医薬品のアトピー性皮膚炎治療薬です。2023.06から在宅自己注射が可能となりました。
1. 承認概要
新有効成分 2022年3月 / 2022年8月 発売
2. 薬効分類名
ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体
3. 一般的名称
ネモリズマブ(遺伝子組換え)
4. 適応症
アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)
5. 類薬との比較

どんどん新しい作用機序のアトピー性皮膚炎治療薬が開発されています。経口薬としては、関節リウマチへの適応から始まった「JAK阻害薬」、本剤のような「抗体医薬品」、外用ではPDE4阻害薬。
本剤の特徴は、「そう痒」の改善を防ぐ適応だということです。QOL改善に期待が大きいですね。
6. 特徴
【特徴】
本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。

【承認状況】
海外では承認されていません(2022年3月現在)。

【作用機序】
本剤は、IL-31 と競合的に IL-31 受容体 A に結合し、アトピー性皮膚炎のそう痒の誘発などに関与する IL-31 の受容体への結合およびその下流のシグナル伝達を阻害することで、そう痒を抑制します。 

【用法・用量】
通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。
本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。

【副作用】
国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。
重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。
アトピー性皮膚炎に伴う、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐ効果があります。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1. 本剤はそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はアトピー性皮膚炎に対して必要な治療を継続します。

【患者さんへの指導例】
1.本剤は、痒みを誘発する炎症性物質のIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。
2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。
3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。
4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。

【ここがポイント!】
本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。
アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合は本剤が選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。
本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。
既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。
なお、2023年6月から自己注射が可能となりました。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、生活にも注意が必要です。 刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、アレルゲン対策などにも留意したいですね。
8. 製造販売元など
製造販売元:マルホ株式会社
お問合せ先:マルホ株式会社 製品情報センター 0120-12-2834

更新:2023.06.06 自己注射可能になったこと
 
(文責 下平秀夫) 2022年12月/2023年6月更新