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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2022年3月 / 2022年6月 発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
遅発性ジスキネジア治療剤 VMAT2阻害剤 | ||
3. 一般的名称 | ||
バルベナジントシル酸塩 | ||
4. 適応症 | ||
遅発性ジスキネジア | ||
5. 類薬との比較 | ||
類薬として、同じVMAT2阻害薬であるテトラベナジン錠(コレアジン)があり、遅発性ジスキネジアの治療に用いられている国がありますが、わが国での適応は「ハンチントン病に伴う舞踏運動」です。 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤は、わが国で初めて遅発性ジスキネジア治療薬として承認されました。これまで治療法がなかった遅発性ジスキネジアによる不随意運動の改善効果が期待されています。 【承認状況】 米国において2017年4月に承認されています。また 2022 年 3 月現在、シンガポール、タイ、韓国、インドネシアで承認を取得しており、マレーシアにおいて承認申請中です。 【作用機序】 本剤は、神経終末に存在する小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を阻害することにより、ドパミンなど神経伝達物質のシナプス前小胞への取り込みを減らし、不随意運動の発生に関わるドパミン神経系の機能を正常化させます。 【用法・用量】 通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与します。なお、症状により1日1回80mgを超えない範囲で適宜増減できます。 増量については、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ検討します。 【副作用】 遅発性ジスキネジア患者を対象とした国内第II/III相試験で認められた主な副作用は、傾眠、流涎過多、アカシジア、倦怠感などでした。 重大な副作用として、傾眠(16.9%)、流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、鎮静、運動緩慢(いずれも1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、重篤な発疹、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)、悪性症候群、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)が現れることがあります。
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7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1.本剤は、強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン、ダコミチニブ等)や、強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)を使用中、または遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者などでは、投与量を1日40mgから増量しないこととされています。なお、これらの条件が2つ以上重なる場合は、活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度なQT延長などの副作用を発現する恐れがあるため、本剤との併用は避けることとされています。 2.中程度以上のCYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)を使用中の場合には、作用が弱まることを考慮して投与量を検討します。また、P-gpの基質薬剤(ジゴキシン、アリスキレン、ダビガトラン等)と併用するとこれらの血中濃度が上昇する恐れがあるので注意が必要です。 3.中等度、あるいは高度の肝機能障害患者についても投与量に制限があります。活性代謝産物の血中濃度が上昇した場合にはQT延長を引き起こす恐れがあるので、遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者、QT延長を起こしやすい患者、相互作用に注意すべき薬剤を併用している患者は定期的に心電図検査を行う必要があります。 【患者さんへの指導例】 1.この薬は、過剰になった脳内の神経刺激伝達を抑えることで、自分の意志とは無関係に体が動いてしまう、または無意識に口や舌を動かしてしまうなどの症状が出る遅発性ジスキネジアを改善します。 2.眠くなったり、ふらついたりすることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないでください。 3.抑うつや不安などの精神症状が現れることがあるので、体調の変化に気が付いた場合には連絡してください。 4.飲み合わせに注意が必要な薬があるため、ほかの薬を使用している場合や新しい薬を使用する場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。 5.不整脈が起きていないか確認するために、心電図検査が行われることがあります。 【ここがポイント!】 本剤は、わが国初の遅発性ジスキネジア治療薬であり、1日1回服用の経口剤です。遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などを長期間服用することで起こる不随意運動を特徴とした神経障害であり、ドパミン受容体の感受性増加などが原因と考えられています。症状は、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなど、顔面に主に現れますが、手や足が動いてしまうなど四肢や体幹部でも認められます。また、重症になれば嚥下障害や呼吸困難を引き起こす可能性もあります。 遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害または抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相プラセボ対照二重盲検比較試験(MT-5199-J02)において、本剤40mg/日または80mg/日を投与した結果、両群で用量依存的な異常不随意運動の改善効果が認められました。 本剤は重症度を問わず処方が可能です。ただし、遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量または中止を検討する必要があります。したがって、本剤の投与対象となるのは抗精神病薬など原因薬剤の減量や中止ができない、あるいは減量や中止を行っても遅発性ジスキネジアが改善しない患者となります。 投与に関しては相互作用が多いため併用薬の厳格なチェックが欠かせません。本剤はプロドラッグであり、未変化体はP糖タンパク質(P-gp)を阻害します。また、体内では主にCYP3Aによって代謝された後、活性代謝物は主にCYP2D6およびCYP3Aで代謝されます。本剤とパロキセチンを併用したとき、未変化体の変化は認められませんでしたが、活性代謝産物のCmaxおよびAUCはそれぞれ1.4倍、1.9倍に上昇したことが報告されています。 これまで、遅発性ジスキネジアについては原因薬の中止や他薬剤への変更に代わる対処法がありませんでした。よって、本剤の臨床的意義は高いと考えられます。なお、本剤は食事の影響を受けやすく、空腹時に服用すると食後投与と比較して血中濃度が上昇する恐れがあるため、副作用モニタリングと共に服用タイミングについても順守できているか確認しましょう。
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8. 製造販売元など | ||
製造販売元:田辺三菱製薬株式会社 販売元:ヤンセンファーマ株式会社 お問合せ先:ヤンセンファーマ株式会社 メディカルインフォメーションセンター 0120-183-275 更新 2023-05-06 イラスト説明文加筆 |