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2014年12月製造販売承認

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■ジャディアンス錠 10mg,25mg■タケキャブ錠 10mg,20mg■ベピオゲル2.5%■ロゼックスゲル 0.75%
■ タケキャブ錠 10mg,20mg
1. 承認概要
新有効成分 2014年12月 / 2015年2月 発売
2. 薬効分類名
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー -プロトンポンプインヒビター-
3. 一般的名称
ボノプラザンフマル酸塩錠
4. 適応症
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、 非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
○下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃、 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
武田から発売されているPPIのタケプロンの後継薬となります。 最も期待されているのはH.ピロリの除菌です。既存のPPIを用いた一次除菌の成功率は7~8割であるのに対し、本剤の第3相試験では一次除菌の成功率は90%を超えています。非びらん性胃逆流症に対する適応はありません。 特徴は、速くかつ長く効いて、個人差が少ないことが期待できるPPIということです。 その理由は3つあります。
1.酸に強い
既存のPPIは酸に弱いので、全て腸溶製剤にする必要がありました。このため、どの製剤も粉砕はできません。これに対し、本剤は酸に強いので速放錠での投与が可能です。 また、酸に強いので胃壁細胞に長時間残存できるため、効果の持続が期待できます。
2.酸による活性化が必要ない
PPIは、腸管から吸収されて血中に移動し、その後胃壁から分泌されます。 既存のPPIは、このままでは効果がなく、酸によって活性化される必要があります。 そのため効果発現は比較的ゆっくりです。 しかし、本剤は酸による活性化の必要がないので、作用発現が速いといわれています。
3.CYP2C19による関与が少ない
既存のPPIの代謝には遺伝子多型のあるCYP2C19の寄与率が大きいため、血中動態および作用の個人差が問題となります(RMでは効果弱く、PMでは効果強い)。 しかし、本剤は主としてCYP3A4で代謝され、CYP2C19の寄与率が低いのでこの心配が少ないです。
ただし、一次除菌で併用するクラリスロマイシンは、CYP3A4を阻害し本剤の血中濃度が上昇するので、併用注意となっています。
【作用機序】
本剤は、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker : P-CAB)と呼ばれる新しいカテゴリーのPPIです。 タケキャブの名称は、武田の開発したCABであることが由来です。
プロトンポンプ(H+,K+-ATPase)とは、ATPを加水分解してできたエネルギーによって細胞内にK+を取り込み、細胞外にH+を出す酵素です。 既存のPPIはこの酵素に結合してその働きを不可逆的に阻害します。 しかし本剤は、K+と争って(競合して)細胞内へのK+取り込みを阻害します。 そうするとポンプが働かなくなるので細胞外にH+を放出することができなくなります。
【承認状況】
海外で承認されている国・地域はありません。
【用法・用量】
(成人の用量)
○胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合
1回20mgを1日1回経口投与します。胃潰瘍では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までとします。
○逆流性食道炎の場合
1回20mgを1日1回経口投与します。通常4週間までの投与とし、効果不十分の場合は8週間まで投与することができます。 さらに、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日1回経口投与しますが、効果不十分の場合は、1回20mgを1日1回経口投与することができます。
○低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制の場合
1回10mgを1日1回経口投与します。
○非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制の場合
1回10mgを1日1回経口投与します。
○ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助の場合
本剤1回20mg、アモキシシリン1回750mg及びクラリスロマイシン1回200mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与します。 クラリスロマイシンは、必要に応じて 1回400mg1日2回を上限として適宜増量することができます。
プロトンポンプインヒビター、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤投与によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合は、 これに代わる治療として、通常、成人には本剤1回20mg、アモキシシリン1回750mg及びメトロニダゾール1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与します。
【効果】
酸分泌抑制
健康成人にタケキャブ錠を1日1回7日間投与した時、投与7日目の24時間中pH4以上を保つ時間の割合は、 タケキャブ錠10mg:63.33%、タケキャブ錠20mg:83.37%でした。
逆流性食道炎
逆流性食道炎に対する投与8週後までの内視鏡的治癒率は、タケキャブ錠20mg:99.0%、タケプロン30mg:95.5%でした。 逆流性食道炎の維持療法において投与24週後の内視鏡的再発率は、タケキャブ錠10mg:5.1%、タケキャブ錠20mg:2.0%、タケプロン15mg:16.8%でした。
H.ピロリの除菌
一次除菌率は、タケプロン30mg:75.9%に対し、タケキャブ錠20mg:92.6%でした。 タケキャブ錠20mg、アモキシシリン水和物、メトロニダゾールの投与における二次除菌の除菌率は98.0%でした。 発売後1年間は長期投与できないのですが、H.ピロリの除菌率が良好なので当面はこちらでの7日間の使用が中心になるかもしれません。
【副作用】
主な副作用は便秘、下痢、発疹、AST上昇、ALT上昇などです。 重大な副作用として、H.ピロリ除菌時に併用するアモキシシリン(サワシリン、パセトシン)、 クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス)では、偽膜性大腸炎などの血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることがあります。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
(1)アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩を投与中の患者さんは使用できません。
(他のPPIも同様で、胃酸分泌抑制作用によりアタザナビル硫酸塩の溶解性が低下、リルピビリン塩酸塩の吸収が低下します)
【患者さんへの説明例】
(1)胃酸を分泌するポンプ機能をブロックして、胃酸の分泌を強力におさえることで、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や逆流性食道炎を治療します。
(2)ヘリコバクター・ピロリの除菌の際は胃酸の分泌を強力におさえることで、他の2種類の抗生物質の効果を高めます。
(3)保険適用上、投与期間が胃潰瘍では通常8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までなどと制限されています。 このため、その後は別の酸分泌抑制薬に変更することがあります。
8. 製造販売元など
製造販売元:武田薬品工業株式会社
(提携:大塚製薬株式会社)
お問合せ先:武田薬品工業株式会社 医薬学術部 くすり相談室 0120-566-587
         大塚製薬株式会社 医薬情報センター 0120-189-840
(文責 下平秀夫) 2015年3月/2015年5月更新