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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2022年6月 / 2022年8月 発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
抗悪性腫瘍剤/HSP90阻害剤 | ||
3. 一般的名称 | ||
ピミテスピブ | ||
4. 適応症 | ||
がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍 | ||
5. 類薬との比較 | ||
消化管間質腫瘍にも用いる既存薬として、チロシンキナーゼ阻害薬がありますが、これらが奏功しなかった患者に対して、作用機序の異なる治療薬が望まれていました。 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤は、世界初の選択的ヒートショックプロテイン90(HSP90)阻害作用を有する医薬品であり、標準治療薬に不応または不耐と判断された消化管間質腫瘍(GIST)患者の新たな治療選択肢として期待されています。 【承認状況】 海外では承認されていません(2022年6月現在)。 【作用機序】 本剤は、HSP90 の ATP 結合部位に結合することでたん白の高次構造の形成を阻害します。これにより、腫瘍細胞の増殖に関与するたん白の不安定化および発現量減少、アポトーシスの誘導などを介して腫瘍増殖抑制作用を示します。 【用法・用量】 通常、成人にはピミテスピブとして1日1回160mg(4錠)を空腹時に投与します。5日間連続経口投与したのち2日間休薬し、これを繰り返します。なお、患者の状態により適宜減量することができます。 【副作用】 国内第III相試験(10058030試験/CHAPTER-GIST-301試験)の盲検投与期間および/または非盲検投与期間において、75例中70例(93.3%)で臨床検査値異常を含む副作用が報告されました。主なものは、下痢54例(72.0%)、食欲減退22例(29.3%)、血中クレアチニン増加21例(28.0%)、倦怠感20例(26.7%)、悪心19例(25.3%)、腎機能障害10例(13.3%)などでした。 なお、重大な副作用として、重度の下痢(16.0%)、眼障害(夜盲[12.0%]、霧視[5.3%]、視力障害[5.3%]、網膜静脈閉塞[1.3%]、網膜症[1.3%]、後天性色素障害[1.3%]など)、出血(腹腔内出血[1.3%]、出血性十二指腸潰瘍[1.3%]など)が報告されており、副作用のグレードによって休薬・減量基準が定められています。
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7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1. イマチニブ、スニチニブおよびレゴラフェニブによる治療が行われていない患者は本剤による治療の対象とはなりません。 2.食後に本剤を投与した場合、CmaxおよびAUCが上昇して副作用の恐れが高まるため、食事前1時間から食事後2時間の服用は避けます。服薬指導の際は、「夕食が19時の場合、18~21時は服用を避ける」など、具体的な指導を行いましょう。 【患者さんへの指導例】 1.本剤は、がん細胞の増殖や生存などに関与するタンパクの働きを阻害することで、抗腫瘍効果を示します。 2.5日間服用し、2日間休薬するというスケジュールで服用します。服薬スケジュールは自己判断せず、医師の指示をしっかり守ってください。 3.食事前1時間から食事後2時間の服用は避けてください。 4.強い腹痛を伴う下痢、激しい下痢、長く続く下痢などが生じた場合、一旦服用をやめてすぐにご連絡ください。 5.夜になると目が見えにくい、全体的にかすんで見える、遠くや近くのものが見えにくいことなどの症状が現れた場合はご連絡ください。 6.吐しゃ物に血が混じる、黒い便や血の混じった便が出ることなどがあればご連絡ください。 7.(妊娠可能年齢の女性やパートナーが妊娠する可能性のある男性に対して)この薬を服用中および服用終了後一定の期間は、適切な方法で避妊を行ってください。 【ここがポイント!】 GISTは、胃や小腸などの消化管壁に発生し、転移・再発を起こす悪性の肉腫です。日本における年間罹患数は、約1,500~2,500例と推定されていて、希少がんの1つです。 「GIST診療ガイドライン」では、組織診断でGISTと確定した場合は外科的治療が第1選択となり、初発GISTでは完治の可能性もあります。切除不能または転移性GISTの場合はイマチニブ(製品名:グリベック錠)が第1選択となり、イマチニブ耐性GISTの場合はスニチニブ(製品名:スーテントカプセル)やイマチニブ増量、スニチニブ耐性GISTの場合はレゴラフェニブ(製品名:スチバーガ錠)が検討されます。GIST患者の多くはKITまたはPDGFRAに変異を有していますが、いずれもKITやPDGFRAなどのチロシンキナーゼを阻害する薬剤であり効果が得られにくかったり、副作用のため使用できなかったりする患者も存在するため、既存薬とは作用機序の異なる治療薬が望まれていました。 本剤は、既存薬と異なりHSP90を阻害することで、HSP90が関与するKITやEGFRなどのタンパクを減少させて、がん細胞の増殖抑制やアポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を示します。 副作用では、重度の下痢、眼障害、出血に注意が必要です。下痢は国内第III相試験において72.0%と高頻度で報告されていて、グレード 3以上の下痢も16.0%となっています。脱水による重篤な腎障害の発現にも注意が必要です。眼障害はHSP90阻害作用に由来する副作用であり、本剤投与開始前および投与中は定期的に眼の異常の有無を確認し、必要に応じて検査を行う必要があります。腹腔内出血や出血性十二指腸潰瘍なども現れることがありますが、GISTは原疾患由来の消化管出血の頻度も高く、約30%〜40%の患者で生じるとされています。
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8. 製造販売元など | ||
製造販売元:大鵬薬品工業株式会社 お問合せ先:大鵬薬品工業株式会社 医薬品情報課 0120-20-4527 更新 2023.05.14 イラストにコメントを追加。 |