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2019年1月製造販売承認

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■ビジンプロ錠15mg,45mg■レルミナ錠40mg■ミネブロ錠1.25mg,2.5mg,5m…■タリージェ錠2.5mg,5mg,10mg…
■ ビジンプロ錠15mg,45mg
1. 承認概要
新有効成分 2019年1月 / 2019年3月 発売
2. 薬効分類名
抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤
3. 一般的名称
ダコミチニブ水和物
4. 適応症
EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ(同:タルセバ)、アファチニブ(同:ジオトリフ)、オシメルチニブ(同:タグリッソ)に続く、国内で5剤目のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)です。優先審査品目に指定され、申請から7ヵ月での承認となりました。

【非小細胞肺がん(NSCLC)】
非小細胞肺がん(NSCLC)は肺がん症例の約85%とされており、日本人のNSCLC患者の30~40%にEGFR遺伝子変異があるといわれています。NSCLCの化学療法は、従来よりプラチナ製剤(CDDP)を核とした併用療法が主流でしたが、その後、がん細胞の増殖に関与する上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が使用されるようになり、NSCLCのうちEGFR遺伝子変異のある患者の予後が改善してきました。

【承認状況】
米国では2018年9月27日にFDA の承認を取得しています。また、2018年12月現在、欧州、スイス、カナダ及び中国にて承認申請中となっています。

【作用機序】
本剤は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(HER)2および4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。

【用法・用量】
通常、成人にはダコミチニブとして1日1回45mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量し、副作用が現れた場合には、添付文書に記載されている基準を考慮して休薬、減量または中止します。

【副作用】
化学療法歴のないEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした非盲検無作為化国際共同第III相試験において、本剤が投与された227例(日本人患者40例を含む)中220例(96.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢193例(85.0%)、爪囲炎140例(61.7%)、口内炎(口腔内潰瘍形成、アフタ性潰瘍など)135例(59.5%)、ざ瘡様皮膚炎111例(48.9%)、発疹・斑状丘疹状皮疹・紅斑性皮疹など82例(36.1%)などでした(承認時)。
なお、重大な副作用として間質性肺疾患(2.2%)、重度の下痢(8.4%)、重度の皮膚障害(31.7%)、肝機能障害(28.6%)が認められています。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.本剤とCYP2D6基質の薬剤(デキストロメトルファンなど)を併用すると併用薬の血中濃度が上昇する恐れがあり、また、PPIなどの胃内pHを上昇させる薬剤を併用すると本剤の血中濃度が低下して有効性が減弱する可能性があるため、それぞれ併用注意となっています。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、EGFRというタンパク質などの働きを抑えることで、がん細胞の増殖を抑えます。
2.空咳、発熱など風邪のような症状が現れ、息切れや息苦しさを感じた場合には使用を中止し、すぐに受診してください。
3.飲み始めに下痢が生じることが多いので、下痢止め薬が処方されている場合は持ち歩くようにしてください。脱水予防のため、水、白湯、お茶、スポーツドリンクなどでこまめに水分を補給しましょう。
4.バランスのよい食事を心掛け、調理をする際は消化をよくするように工夫してください。乳製品、繊維質や脂質が多い食品、香辛料やコーヒー、アルコールなどの刺激物はなるべく控えましょう。
5.薬を飲み続けていると、爪周囲や口腔内の赤み、腫れ、痛みなどが生じることがあります。患部は清潔に保ち、日常生活に支障がある場合はご相談ください。
6.吹き出物や発疹などの皮膚症状が生じることがあります。症状の予防や軽減のため、低刺激の保湿剤によるスキンケアをこまめに行い、外出時は紫外線対策をしましょう。

【ここがポイント!】
本剤は、EGFRやHER2、HER4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することにより、EGFR遺伝子変異陽性のがん細胞の増殖を抑制すると考えられています。本剤で治療を行うためには、既存のEGFR-TKIと同様にEGFR遺伝子変異検査を実施する必要があります。
臨床試験では副作用が高頻度で認められたため、患者さんには事前に発現率が高い副作用の好発時期を知らせておくことが重要です。個人差はありますが、投与を開始してから副作用が発現するまでの時期として、下痢は2ヵ月程度(中央値6日)、ざ瘡などの皮膚障害は4ヵ月程度(中央値9日)、口内炎や爪囲炎は6ヵ月間程度(それぞれの中央値9日、29日)が目安となります。投与初期から発現する可能性が高いので、それぞれの副作用への対策法も伝えるように心掛けましょう。
NSCLCは分子標的薬の登場により着実に予後が改善しています。治療選択肢となる分子標的薬も増えたため、それぞれの薬剤の副作用プロファイルや用法を確認し、患者さんが安心して治療に専念できるように積極的にフォローしましょう。
8. 製造販売元など
製造販売元:ファイザー株式会社
お問合せ先:ファイザー株式会社 製品情報センター学術情報ダイヤル 0120-664-467
(文責 下平秀夫) 2019年6月