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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2017年7月 / 2017年9月 発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
抗ヘルペスウイルス剤 | ||
3. 一般的名称 | ||
アメナメビル | ||
4. 適応症 | ||
帯状疱疹 再発性の単純疱疹 | ||
5. 類薬との比較 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤の主な特徴は3つあります。1つめは1日1回の投与で帯状疱疹に効果を示すこと、2つめは糞中排泄型のため腎機能低下の際の用量調節が不要であること、3つめは既存の抗帯状疱疹ウイルス薬とは作用機序が異なるので交差耐性を示さないことです。 ★本剤の適応症はこれまで『帯状疱疹』のみでしたが、2023年2月に『再発性の単純疱疹』の適応が追加されました。 【類薬】 帯状疱疹の既存薬としては、アシクロビル(商品名:ゾビラックス)、バラシクロビル(商品名:バルトレックス)、ファムシクロビル(商品名:ファムビル)があります。 【背景】 帯状疱疹は、水痘の罹患時に神経節に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルスが、ストレスや加齢などによる免疫力の低下で再び活性化し発症します。神経痛様の痛みにはじまり、数日後に神経分布に沿って片側性、帯状に水疱を伴った浮腫性紅斑ができて膿疱化、びらんを形成したあと、痂皮化して約3週間で治癒します。皮疹の治癒後も疼痛が数か月から数年続くことがあり、これは帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)と呼ばれます。 【承認状況】 わが国で開発された薬剤であり、2017年6月時点で海外では承認されていません。 【作用機序】 ヘルペスウイルスのDNA複製に必要な酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の酵素活性を阻害することにより、二本鎖DNAの開裂およびRNAプライマーの合成を抑制し、抗ウイルス作用を発揮すると考えられています。一方、これまでわが国で使用されている経口抗ヘルペスウイルス薬はプリン骨格を有する核酸類似体であり、ヘルペスウイルスが増殖する際に必要なDNAポリメラーゼを阻害する「DNAポリメラーゼ阻害薬」に分類されます。本剤は非核酸類似体であり作用機序が異なるため、DNAポリメラーゼ阻害薬に耐性のあるヘルペスウイルスにも有効と考えられています。 【臨床効果】 バラシクロビルを対照とした無作為化二重盲検並行群間試験(対象:帯状疱疹による皮疹出現後72時間以内の患者)などの国内臨床試験において、VACVに対する非劣性が確認されました。 【用法・用量】 〈帯状疱疹〉には通常、成人にはアメナメビルとして1回400mgを1日1回食後に経口投与します。 発病初期に近いほど効果が期待できるので、皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましいです。また、原則として7日間使用します。 〈再発性の単純疱疹〉には、通常、成人にはアメナメビルとして1200mgを食後に単回経口投与します。 【腎機能】 本剤は肝臓のCYP3Aで代謝されます。腎機能による薬物動態への影響が小さく、クレアチニンクリアランスに応じた投与量設定の必要性がありません。 【食後服用の理由】 健康成人に本剤800mgを空腹時に投与したとき、Cmax及びAUCは食後投与と比較してそれぞれ約0.64倍及び0.52倍に減少しました。そのため「食後」で服用する設定になりました。 【副作用】 国内臨床試験で、臨床検査値異常を含む副作用が14.5%に認められています。主な副作用としては、β-NアセチルDグルコサミニダーゼ増加(2.8%)、α1ミクログロブリン増加(1.9%)、フィブリン分解産物増加(1.6%)、心電図QT延長(1.3%)などがあげられます。 【薬剤師国家試験】 国試107回 問165-166 正解:15; 35 60歳男性。仕事が忙しく睡眠不足が続いていた。ある日、右側胸部にかゆみを伴った皮疹が現れ、強い痛みも生じたため受診し、帯状疱疹と診断された。 問165(病態・薬物治療) この患者に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。 1 疲労やストレスが発症の要因となった可能性が高い。 2 皮疹は血管に沿って全身に拡がっていく。 3 病原体は麻しんと同じである。 4 皮疹出現の約2週間前に感染したと考えられる。 5 副腎皮質ステロイド薬を用いる場合、抗ウイルス薬を併用する。 正解:1、5() 問(薬理) 抗ウイルス薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。 1 アメナメビルは、帯状疱疹ウイルスのヘリカーゼ・プライマーゼ複合体のDNA依存性ATPase活性を阻害して、mRNAの合成を阻害する。 2 ガンシクロビルは、サイトメガロウイルスのチミジンキナーゼにより一リン酸化された後、宿主細胞キナーゼで三リン酸化体まで変換されて、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する。 3 オセルタミビルは、インフルエンザウイルスが宿主細胞から遊離する際に働くノイラミニダーゼを阻害して、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する。 4 ホスカルネットは、サイトメガロウイルスのRNAポリメラーゼのピロリン酸結合部位に結合して、RNAの合成を阻害する。 5 アシクロビルは、三リン酸化体に変換されて、帯状疱疹ウイルスに感染した宿主細胞内でデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)と競合して、ウイルスのDNAポリメラーゼを阻害する。 正解:3、5
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7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1.本剤はCYP3Aで代謝され、またCYP3A及び2B6を誘導します。リファンピシン(リファジン他)との併用は、両薬剤の肝薬物代謝酵素CYP3A誘導作用により相互に血中濃度が低下するため禁忌です。 【患者さんへの指導例】 1.単純疱疹と帯状疱疹の原因となるウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬です。 2.ウイルスの増殖を止めるために発症早期に服用するのが効果的です。 3.空腹時に服用すると血中濃度が低下したり、効くまでの時間が遅くなることがありますので、食後に服用してください。
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8. 製造販売元など | ||
製造販売元:マルホ株式会社 お問合せ先:マルホ株式会社 製品情報センター 0120-12-2834 更新:2023.6 2023年2月に、「再発性の単純疱疹」の適応が追加されました。 |