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1. 承認概要 | ||
新有効成分 2023年9月 / 未発売 | ||
2. 薬効分類名 | ||
高リン血症治療剤 | ||
3. 一般的名称 | ||
テナパノル塩酸塩錠 | ||
4. 適応症 | ||
透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善 | ||
5. 類薬との比較 | ||
高リン血症を改善する薬剤として、沈降炭酸カルシウム(製品名:カルタン)、セベラマー塩酸塩(製品名:レナジェル、フォスブロック)、ビキサロマー(製品名:キックリン)、炭酸ランタン水和物(製品名:ホスレノール)等が用いられています。それぞれ、高カルシウム血症、便秘、鉄過剰など課題も多いです。 | ||
6. 特徴 | ||
<特徴> 本剤は、透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善の適応で、2023年9月25日に製造販売承認を取得しました。本剤の特徴として、リン吸着剤ではなく、リン輸送を阻害するリン吸収抑制薬であること、1日2回食直前服用であること、主な副作用は下痢(61.3%)であることがあげられます。 なお、本剤は血中リンの排泄を促進する薬剤ではないので、食事療法などによるリン摂取の制限を考慮する必要があります。 <承認状況> 海外では2019 年に米国、2020 年にカナダにおいて 便秘型過敏性腸症候群 (IBS-C)C の適応で承認されていますが、高リン血症治療剤として承認されているのはわが国のみです(2023年9月現在)。 <作用機序> 本剤は腸管で局所的にナトリウム/プロトン交換輸送体3(NHE3)を阻害し、消化管からのNa+の吸収を低下させ、腸管上皮細胞内のH+濃度を上昇させます。細胞内のpHが低下するとリン吸収の主要経路である傍細胞経路(細胞間隙経路)からのリンの透過性が低下し、腸管からのリン吸収が低下します。 <用法・用量> 通常、成人にはテナパノルとして1回5mgを開始用量として、1日2回、朝食および夕食直前に経口投与します。以後、症状や血清リン濃度の程度により適宜増減することができます。最高用量は1回30mgです。 血液透析中に排便を催すことが懸念される患者では、透析直前での投与を控え、朝夕以外の食直前の投与も可能です。 <安全性> 透析中の慢性腎臓病患者を対象とした国内第III相臨床試験において、本剤投与群全体の76.6%(331/432例)に有害事象が発現しました。最も多く発現した有害事象は下痢で、61.3%(265/432例)に生じました。重症度は軽度のものが大半で、重篤な下痢は認められませんでしたが、下痢によって脱水に至る恐れがあるため注意が必要です。
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7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
<患者さんへの指導例> 1.この薬は、食事に含まれるリンの吸収を抑えて、血中のリン濃度を低下させます。 2.服用後に食事をとらなかった場合には、この薬の効果は期待できません。 3.血中のリンの排泄を促す薬ではないので、リンを多く含む食事の制限が必要です。 4.下痢に伴う口渇や手足のしびれ、強い倦怠感、血圧低下などが現れた場合は速やかにご連絡ください。 <ここがポイント!> 高リン血症の治療には、食事でのリン摂取制限、透析によるリン除去の他、消化管からのリン吸収を抑制す経口リン吸着薬が用いられます。リン吸着薬には、副作用として嘔気や下痢などの消化管障害、高カルシウム血症、鉄過剰症が現れることがあるため、新たな選択肢として本剤が開発されました。本剤は、高リン血症治療に伴う既存のリン吸着薬による服薬負荷を軽減しつつ、長期間のリン管理が可能です。 <臨床成績> 血液透析施行中の高リン血症患者を対象とした第III相プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験(試験番号:7791-004)において、主要評価項目である投与開始8週後の血清リン濃度のベースラインからの変化量の最小二乗平均値は、プラセボ群で0.05mg/dL(95%信頼区間:−0.25~0.36)、本剤群で−1.89mg/dL(同:−2.19~−1.60)でした。プラセボ群と本剤群との変化量の差(本剤群−プラセボ群)は、−1.95mg/dL(同:−2.37~−1.53)であり、本剤群ではプラセボ群に比べて血清リン濃度が有意に低下しました。 なお、テナパノルは米国では便秘型の過敏性腸症候群(IBS-C)に対する治療薬として承認されていますが、わが国では未承認です。 | ||
8. 製造販売元など | ||
製造販売元:協和キリン株式会社 お問合せ先:協和キリン株式会社 くすり相談窓口 0120-850-150 |