|
1. 承認概要 | ||
新有効成分 2022年8月 / 2022年9月 発売(薬価未収載) | ||
2. 薬効分類名 | ||
抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体 | ||
3. 一般的名称 | ||
チキサゲビマブ(遺伝子組換え)製剤/シルガビマブ(遺伝子組換え)製剤 | ||
4. 適応症 | ||
SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制 | ||
5. 類薬との比較 | ||
6. 特徴 | ||
【特徴】 本剤は、SARS-CoV-2による感染症の治療に加え、曝露前の発症抑制にも使用することができる世界初の薬剤です。 【承認状況】 海外ではCOVID-19の曝露前予防を適応症として2021年12月に米国で緊急使用許可を取得し、2022年3月に欧州で販売承認を取得しています(2022年8月現在)。 【作用機序】 本剤は、チキサゲビマブ及びシルガビマブの2つの抗体薬を配合した薬剤です。これらは2 種類のヒト免疫グロブリン G1κモノクローナル抗体であり、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)上の各抗体が互いに重複しない部位に同時に結合し、SARS-CoV-2 に対する中和作用を示し、ウイルスの宿主細胞への侵入を阻害することで効果を発揮すると考えられています。 【用法・用量】 〈SARS-CoV-2による感染症〉 通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射します。 〈SARS-CoV-2による感染症の発症抑制〉 通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射します。 SARS-CoV2変異株の流行状況などに応じて、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできます。 なお、2剤は混和せずにそれぞれ筋肉内注射を行い、投与部位は左右の臀部とします。 【副作用】 主な副作用として、注射部位反応(発現頻度 1%以上)、発疹・蕁麻疹や注射に伴う反応(発現頻度 1%未満)が報告されています。 なお、重大な副作用として、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症(頻度不明)が現れることがあります。
| ||
7. 使用上の注意と服薬支援 | ||
【薬剤師への注意】 1.本剤は一般流通を行わず、厚生労働省が所有した上で、流通委託先を通じて対象医療機関に配分・無償譲渡されます。発症抑制目的での投与に限って配分されるため、計画的な投与が可能であることから在庫配置は認められていません。 2.本剤を2回目以降繰り返し投与する場合には、前回の投与から6か月間は間隔をあける必要があります。★2023年2月に添付文書追記。 【患者さんへの指導例】 1.本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療または発症抑制に用いられる薬です。2種類の中和抗体を投与することで、新型コロナウイルスに対する中和作用を示します。 2.過去に薬剤などで重篤なアレルギー症状を起こしたことのある方は必ず事前に申し出てください。 3.投与中または投与後に、発熱、悪寒、吐き気、不整脈、胸痛、脱力感、頭痛のほか、過敏症やアレルギーのような症状が現れた場合は、すぐに医療者または医療機関に連絡してください。 【ここがポイント!】 エバシェルド筋注セットは、新型コロナウイルス感染症の「治療」と「発症抑制」の適応を取得した抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体です。ワクチンを除き、新型コロナウイルス曝露前の発症抑制に用いることのできる初めての医薬品です。既承認薬のカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)も発症抑制の適応を有していますが、カシリビマブ/イムデビマブの対象患者は濃厚接触者であり、本剤の対象は濃厚接触者ではない曝露前の人という違いがあります。 治療目的での投与対象は、軽症~中等症I相当で、重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者です。しかし、供給量が限られていることや治療を目的とした薬は他にもあることから、当面の間は発症抑制を目的とした投与に限って薬剤が供給されます。 発症抑制目的での投与対象は、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が推奨されない人や、免疫機能低下などによりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人です。事務連絡では、日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版」(2022年8月30日)を踏まえて以下のようになっています。 ・抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者 ・B細胞枯渇療法(リツキシマブなど)を受けてから1年以内の患者 ・ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者 ・キメラ抗原受容体T細胞レシピエント ・慢性移植片対宿主病を患っている、または別の適応症のために免疫抑制薬を服用している造血細胞移植後のレシピエント ・積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者 ・肺移植レシピエント ・固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者 ・T細胞又はB細胞枯渇剤による急性拒絶反応で最近治療を受けた固形臓器移植レシピエント ・CD4Tリンパ球細胞数が50cells/μL未満の未治療のHIV患者 発症抑制の効果については、海外第III相試験(PROVENT 試験)において、プラセボ群と比較して、RT-PCR検査で陽性が確認された患者の症状のリスク減少率は76.7%であり、統計学的に有意な差が認められました。また、1回投与後、少なくとも6ヵ月間は感染抑制効果が持続することが示されています。 新型コロナウイルス感染症の予防の基本はワクチン接種ですが、ワクチンを接種することができない人や効果が不十分と考えられる人に対するワクチン以外の予防の選択肢として期待されます。また、筋注ということから、訪問診療において曝露前の患者への投与が簡便であることも利点の1つと考えられます。 患者負担については、本来は薬剤費を含めて全額自己負担となるところですが、本剤を必要とする対象者にとって過度な負担とならないように、投与時の自己負担分の徴収金額は3,100円以下となる方針です。
| ||
8. 製造販売元など | ||
製造販売元:アストラゼネカ株式会社 お問合せ先:アストラゼネカ株式会社 メディカルインフォメーションセンター 0120-189-115 ★2023年2月に添付文書追記更新。「前回の投与から6か月間は間隔をあける」 |