◆ 新薬情報 index

2021年12月製造販売承認

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■ラゲブリオカプセル200mg
■ ラゲブリオカプセル200mg
1. 承認概要
新有効成分 2021年12月 / 2021年12月 発売
2. 薬効分類名
抗ウイルス剤
3. 一般的名称
モルヌピラビル
4. 適応症
SARS-CoV-2による感染症
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は外来でも使用可能な経口剤であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐとされています。

【承認状況】
本剤は、わが国で特例承認されたものであり、承認時における有効性、安全性、品質に係る情報は限られているため、引き続き情報を収集する必要があります。そのため、本剤の使用にあたっては、あらかじめ患者又は代諾者に、その旨並びに有効性及び安全性に関する情報を十分に説明し、文書による同意を得てから投与することになっています。

【作用機序】
本剤の活性代謝物がRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害することにより、ウイルスの増殖を抑えます。

【用法・用量】
通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間経口投与します。COVID-19の症状が発現してから速やかに投与を開始する必要があります。

【副作用】
重症化リスクのある非重症COVID-19患者を対象に本剤またはプラセボを投与した多施設共同第III相試験の中間解析において、プラセボ群の重症化(29日目までの入院・死亡)が377例中53例(14.1%)であったのに対し、本剤群では385例中28例(7.3%)と、相対的リスクが48%減少しました(p=0.0012)。
なお、臨床試験において有効性が確認されたのは発症から5日以内に投与を開始した感染者であり、6日目以降における有効性のデータは得られていません。
副作用としては、下痢、悪心・嘔吐、浮動性めまい、頭痛が発現率1%以上5%未満で報告され、重要な潜在的リスクには、骨髄抑制および催奇形性が示されています。動物実験で催奇形性が認められており、妊娠しているまたは妊娠している可能性のある女性には投与できません。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.本剤は、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者が投与の対象です。投与対象は重症化リスク因子を有する患者が中心ではあるものの、審査報告書では、高熱や呼吸器症状など相当の症状を呈し重症化の恐れがある場合なども、投与対象になり得るとしています。
2.包装は40カプセルのバラ包装のみで、1瓶を1回分として使い切れるようになっています。
3.RMP資材として同意説明文書が用意されており、処方の際には患者本人に内容を確認してもらったうえで、患者・医師双方がサインして保管することになっています。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、新型コロナウイルスのRNAに取り込まれることによって、ウイルスの増殖を阻害して抗ウイルス作用を示します。
2.症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。
3.下痢、悪心・嘔吐、めまい、頭痛などの症状が現れることがあります。これらの症状が生じた場合であっても自己判断で中止せず、医師または薬剤師に相談してください。
4.(女性に対して)妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用できません。授乳中の人は注意が必要ですので、服用開始前に相談してください。妊娠する可能性のある女性は、服用中および服用後4日間は適切な避妊を行ってください。

【ここがポイント!】
本剤は、軽症~中等症ⅠCOVID-19患者に使用できる国内初の経口抗ウイルス薬です。これまで、軽症患者を対象とした治療薬としては、中和抗体製剤のカシリビマブ/イムデビマブ注射液セット(商品名:ロナプリーブ)とソトロビマブ点滴静注液(同:ゼビュディ)の2剤が承認されていて、抗ウイルス薬のレムデシビル点滴静注用(同:ベクルリー)は、軽症から重症に使用できます。本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2021年12月24日に特例承認されました。なお、重症度の高い患者に対する有効性は確立していません。
経口剤では、中等症Ⅱと重症患者を対象としたJAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)とステロイド薬のデキサメタゾンが使用されていますが、これらはサイトカインストーム、又は肺炎の際の免疫抑制、抗炎症を目的とした薬剤であり、経口抗ウイルス薬としては本剤が初めての薬剤となります。なお、2022年2月に2剤目の経口抗ウイルス剤として、ニルマトレルビル錠/リトナビル錠(同:パキロビッドパック)が承認されました。本剤の作用機序はウイルス複製阻害であり、オミクロン株に対してもこれまでの変異株と同様の効果が期待できると考えられています。
投与の対象となるのは、以下のような重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症Iの患者です。
《国際共同第II/III相試験(MOVe-OUT試験)の組み入れ基準》
・61歳以上の高齢者
・活動性のがん(免疫抑制または高い死亡率を伴わないがんは除く)
・慢性腎臓病
・慢性閉塞性肺疾患
・肥満(BMI 30kg/m2以上)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)
・糖尿病
本剤は、2022年9月16日から一般流通(メーカー → 卸 → 医療機関・薬局)となりました。
8. 製造販売元など
製造販売元:MSD株式会社
お問合せ先:MSD株式会社 MSDカスタマーサポートセンター 0120-024-961

2021年9月更新 <2021.8に薬価収載、一般流通について加筆>
2023年3月更新 <類薬図を更新>

 
(文責 下平秀夫) 2022年3月/2022年9月更新