◆ 新薬情報 index

2020年6月製造販売承認

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■リベルサス錠3mg,7mg,14mg■バフセオ錠150mg,300mg■エンレスト錠50mg,100mg,200…■エナジア吸入用カプセル中用量,高用量■オンジェンティス錠25mg
■ バフセオ錠150mg,300mg
1. 承認概要
新有効成分 2020年6月 / 2020年8月 発売
2. 薬効分類名
HIF-PH阻害剤 -腎性貧血治療剤-
3. 一般的名称
バダデュスタット
4. 適応症
腎性貧血
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は、慢性腎臓病(CKD)の保存期・透析期にかかわらず、1日1回の経口服用で腎性貧血を改善します。
2020年12月時点において、ロキサデュスタット錠(商品名:エベレンゾ)、ダプロデュスタット錠(同:ダーブロック)、エナロデュスタット錠(同:エナロイ)、そして本剤の4種類が発売され、モリデュスタットナトリウム錠(同:マスーレッド)が承認申請中です。それぞれ適応、服用回数、腎機能などによる投与量、増量段階の回数や間隔、食事の影響などに違いがあります。
本剤は食事の影響が比較的少なく、どのタイミングでも服用できます。また、CKD保存期でも透析期でも同じ投与量であり、腎機能によって投与量が異なることもありません。調節範囲も4段階と比較的少なくなっています。腎性貧血患者は、リン吸着剤などの併用により服用時点が多くなりがちなので、シンプルな服用方法はアドヒアランスの向上に役立つと考えられます。

【承認状況】
海外では承認されていません(2020年6月現在)。

【作用機序】
本剤は低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)を阻害することで、HIF経路を活性化させ、エリスロポエチン(EPO)の産生を増やし、ヘモグロビン及び赤血球産生亢進作用を発揮することで腎性貧血を改善する薬剤です。

【用法・用量】
通常、成人にはバダデュスタットとして1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与します。以後は、患者の状態に応じて最高用量1日1回600mgを超えない範囲で適宜増減します。増量する場合は、150mg単位を4週間以上の間隔を空けて行います。休薬した場合は、1段階低い用量で投与を再開します。
なお、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)で未治療の場合、本剤投与開始の目安は、保存期の慢性腎臓病(CKD)患者および腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満とされています。

【副作用】
CKD患者を対象とした国内全臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は、総症例数481例中61例(12.7%)に認められました。主な副作用は、下痢19例(4.0%)、悪心8例(1.7%)、高血圧7例(1.5%)、腹部不快感、嘔吐各4例(0.8%)でした(承認時)。
なお、重大な副作用として、血栓塞栓症(4.2%)、肝機能障害(頻度不明)が現れることがあります。本剤の投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価し、本剤投与中も血栓塞栓症が疑われる徴候や症状を確認する必要があります。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.本剤はOAT1およびOAT3の基質であり、BCRPおよびOAT3に対して阻害作用を有します。したがって、BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、サラゾスルファピリジンなど)、OAT3の基質となる薬剤(フロセミド、メトトレキサートなど)との相互作用には注意が必要です。
2.多価陽イオンを含有する経口薬(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムなどを含む製剤)と併用した場合にキレートを形成し、本剤の作用が減弱する恐れがあるため、併用する場合は本剤の服用前後2時間以上を空けて投与します。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、赤血球のもとになる細胞を刺激し血液中の赤血球を増やすことで、貧血を改善します。
2.吐き気、嘔吐、手足の麻痺、しびれ、脱力、激しい頭痛、胸の痛み、息切れ、呼吸困難などが現れた場合は、すぐに医師に連絡してください。
3.この薬には飲み合わせに注意が必要な薬があります。新たに薬やサプリメントを使用する場合は、必ず医師または薬剤師に本剤の服用を伝えてください。

【ここがポイント!】
腎性貧血は、腎機能の低下に伴いエリスロポエチン(EPO)の産生が減少することによって生じる貧血です。これまで、腎性貧血の治療にはEPOの補給を行うために、ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)やエポエチンベータペゴル(同:ミルセラ)などの赤血球造血刺激因子(ESA)が投与されてきました。これらの製剤は注射薬ですが、近年は内服薬であるHIF-PH阻害薬が開発され、患者さんの負担を軽減し、QOLが維持されやすくなりました。
HIF-PH阻害薬は、低酸素応答機構がEPO産生を調節することを利用した、まったく新しい機序の腎性貧血治療薬であり、その機構解明の功績により、William G. Kaelin Jr.氏、Sir Peter J. Ratcliffe氏、Gregg L. Semenza氏が2019年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
HIF-PH阻害薬の登場によって、腎性貧血治療が薬局薬剤師にとって身近なものになります。日本腎臓学会から「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」が公表されていますので、一度目を通しておくとよいでしょう。
8. 製造販売元など
製造販売元:田辺三菱製薬株式会社
お問合せ先:田辺三菱製薬株式会社 くすり相談センター 0120-753-280
(文責 下平秀夫) 2020年12月/2021年11月更新