インタおよびインターネットにより提供される添付文書および安全性情報の活用
参加レポート
by shimo
平成11年12月11日掲題の第12回日本医薬品情報学研究会(JASDIhttp://jasdi.jp/)フォーラムが田辺製薬ビルにて開催された。
出席者は製薬企業の医薬品情報担当の参加者が多数であった。
まず、JASDI代表幹事の山崎幹夫氏により開会のあいさつが行われた。「医薬品情報システム」など医療の分野でもインターネットによる情報提供が急速な広がりをみせている。JASDIとしてインターネツトに関するフォーラムは2度目となった。より有意義な会となるよう願っていると述べた。
○「医薬品情報システム」による電子化した医薬品情報の提供
東京大学医学部付属病院 病院将来計画室 折井孝男氏が講演した。「医薬品情報システム」は、医療用医薬品の安全、適正な使用を推進することを目的に、医師、歯科医師及び薬剤師を対象に最新の医薬品情報をインターネットを通じて提供するものである。各種の情報の内容には、その情報の提供者が責任を持つことになっている。当システムにおいては第3者の加工を経ない最新の一次情報が一元的に提供されることになる。一般的にデータベース構築にあたっての問題点として、タイムラグ、誤入力、情報の重複が問題となる。また、これからは、情報を受け取るのではなく、自分から取りにいくことが必要であると述べた。
○製薬企業の立場から
製薬企業の立場から田辺製薬(株)企画情報部宮城島利一氏が講演した。
「医薬品情報システム」への情報提供について、医療用医薬品添付文書の電子化への取り組みについて述べた。本システム平成11年5月末の稼動に先立って、厚生労働省、医薬品機構、日薬連でワーキンググループを編成し情報の電子化、提供方法等について検証を行った。一方、電子メディアを利用した情報提供の留意点として、情報の受け手が受動的となること、セキュリティの問題、2次加工や著作権の問題、製薬企業の立場からの情報提供の難しさなどを述べた。
○病院薬剤師の立場から
病院薬剤師の立場から虎ノ門病院薬剤部の林 昌洋氏が講演した。薬剤師法第25条の2の踏まえて、患者に提供すべき副作用情報でもっとも重視すべきことは、重大な副作用の発現をできるだけ早い時期に避けられるよう患者やその家族に提供しておくことである。そこで患者に重大な副作用の初期症状を積極的に提供することになり、結果として多くの患者のリスクを減らすことができるようになった。これらの成果を全国的に集計しようというのが「プレアボイド」の主旨であり、全国の病院薬剤部よりぞくぞく報告されている。(参考: 日本病院薬剤師会)
インターネットについては医薬品情報システム、PubMed、JAPICなどその特徴を十分に理解して利用する必要があると述べた。
○保険薬局の立場から
保険薬局の立場から八王子薬剤センター情報・教育部 下平秀夫氏が日常業務の中で利用できる医薬品添付文書関連情報について述べた。日本薬剤師会による会員向け情報提供サービスにはFax利用では日薬ニュース、日薬情報ボックス(OntheWeb)があり、インターネット利用関連では、日薬メールニュース、JAPICデータ試用サービスがある。インターネットによる情報発信は「医薬品情報システム」とともに益々その機能が発展しつつある。また、医薬品卸、製薬企業による情報も充実しつつある。このような背景から薬剤師は今後知らなかったではすまない情報に対する責任が増すことになると述べた。
パネルディスカッション
休憩をはさんで、折井氏、林氏の司会により当日の演者を壇上に迎えてパネルディスカッションが行われた。
製薬企業の情報提供担当者は、他社の製品との比較情報や適応外使用についての情報提供は困難である。また、一般の方に対して処方された医薬品に対する副作用の質問への回答等の困難さがあると述べた。医薬品卸情報提供担当者は、卸からの情報にバイアスはないと自負している。一次情報は重要だが、2次加工して現場で利用しやすい情報に変換していると述べた。病院の情報担当者からは、各社の添付文書に記載する語句についての不統一性が問題として挙げられた。医薬品情報システムについては、アクセスに時間を要するという課題がある。また、インターネットを利用できる環境について、大学病院の利用導入率に比べ、中小診療所や保険薬局の導入率の低いことなどが指摘された。
インターネットは情報を収集する強力な手段である。提供する側、受ける側が提供すべき情報、ほしい情報について情報交換をし、より信頼度が高く、有用性の高い情報を適正に提供し、収集する側は、その特性を十分理解した上で利用する必要があることが強調された。